京都こみち日記

こみちを歩く こみちに迷う 日々のこと

 『南部牛追唄』音色

 発表会を前にして稽古の注意点が「音色」にまで及んできた。今まではとにかく音が出てりゃ、暗譜できてりゃオーケイだったのが、音の「色」にまでチェックが入る。太くとか細くとか盛り上げてとか抑え気味にとか、挙げ句の果てには、音がきれい過ぎるとか。民謡(山唄/『南部牛追唄』)を選んでしまったばかりに、日常生活の泥臭さや鷹揚さ、独特のリズム感も必要なのだ。
 今のわたくしの出す音は、竹笛ならではの哀調を帯びた音色というより、おもちゃのホイッスルを吹いているかのような薄っぺらく鋭くカタイ音で、まるで子牛が二列縦隊でイチニィー、イチニィーと行進し出しそうだ。チガーウ!そんな雰囲気を出したいのでは、なーい!放牧、放牧!伸び伸びと!広々と!太く!大らかに!そう思ってわざと力を抜いて吹くと、逆に必要ないところにばかり力が入って音がキーンとなったり、空気が漏れて息も絶え絶えのヘナヘナ演奏になってしまう。
 どうやらこの音の「色」というのは、唄口にあてている唇の、息が出る「穴」で調節するらしい。この息穴を、絞り過ぎず開け過ぎず、もう気持ち小さくして上唇だけ左右に引いて横長に開けろ、などと言われても、そんな細かい神経がわたくしの唇に通っているとは知らなかった。今までなんと大雑把に生きてきたのか。しかし、ほんのちょっとした力の加減やなにかの具合で音色が変化するのは、なんとなくわかってきた。耳が育ってきたようだ。演奏している最中も、耳が目指す所の音色を聞き分けながら、しかも中断せずに『南部牛追唄』を一人で吹ききるというのは至難の技だが、せっかく能舞台の音響のよい場所で演奏するので、竹(笛)の音色が映える民謡に果敢に挑戦してみようと思う。