京都こみち日記

こみちを歩く こみちに迷う 日々のこと

『腰痛探検家』高野秀行著

腰痛探検家 (集英社文庫) 面白くて一気読みした。
 筆者の高野さんはわたくしより一つ年上で、学生時代は探検部所属だったそうで、それだけをきいたらとても身近に感じるが、実際は遠巻きに様子を伺うだけで充分、近寄ったら暑苦しいというタイプの人のようだ。
 内容は、彼が40歳前後の数年間に渡って体験した、壮絶なる腰痛と七転八倒いや二転三転するその診断と治療についての話だが、今彼は生きているので、はたからみると相当シャレになっていて笑えた。
 エピローグの「腰痛Love」の考察は、腰痛から得た人生論となっていて、興味深く読んでけっこう共感した。しかし文庫版のあとがき(2010年10月)p291では、「本書の著者は頭がおかしい―。久しぶりに原稿を読み返して、率直にそう思った。」とあって、爆笑した。でも「腰痛治療に明け暮れていたときは朝から晩まで腰痛のことしか考えられず、まったくもってどうかしていた。略・・ 今度は「腰痛」ではなく「腰痛人間のことを世間に知らしめたい」という執着にとらわれてしまったようだ。腰痛はどうにもしつこい。というより、私に問題があるのかもしれないと初めて思い当たった。」とあるので、40もとうに超えて、ちょっとは自分のことをわかりかけているのかもしれない。それにしてもこの人は、ほどほどということを知らないようで、腰痛が落ち着いてからも、サハラ砂漠を42.195キロ走る「サハラマラソン」に出たりしている。それがまた傍(はた)から見ると、アホらしくて笑える。これぞ、オトコという生物の一種の典型だと思う。