京都こみち日記

こみちを歩く こみちに迷う 日々のこと

 唇を保つ

 篠笛の演奏でたいそう苦労するのが、出したい音に合わせて、唇と唄口の距離と位置を一定に保つということに集中する、ということだ。
 実際、今の課題曲「風の踊り」の演奏、たった約3分の間だけでも、集中力を保つのはひじょうに骨が折れる。ふ、と集中の具合を変えると、たちどころに必要の無い音が出てしまう。
 前回の稽古日の時も、それまで出なかった高音8の音が、自主稽古の成果が発揮されてうまい具合に出たので、皆さん、聴いといてや!といわんばかりに、曲中何度か出てくる8の音の度にピーーと大き目の音を出してアピールしてみた。「風の踊り」だけに、軽やか〜に飛んでいけーってな気持ちを込めたつもりである。一曲吹き終えた時には、うまく演った(いった)、小さくガッツポーズ、という心持ちであった。
 しかしながら演奏直後の先生からのコメントは
「8の音ね、もうちょっと、抑えて。優し目に出してみて。はい、もう一度」であった。
自分としては、意外ーっ、な気持ちを抱えつつも、先生にはこの種のアピールは無駄である事を痛感し、言われる通りにやり直したけどさ。
 ここで学んだことは、篠笛の演奏は、一喜一憂を大袈裟に表現しないコト、である。あくまで、淡々と、安定した平穏なテンションを保つ稽古である。
 そういえばこのあり様は、わたくしが生活する上での目指しているところでもあった。うっかり忘れていたが。
 笛の稽古を重ねるにしたがって、自分がいかに集中力散漫か、自分自身の一喜一憂に振り回されているか、ということがはっきりとしてきたが、それでも徐々に、全くコントロール不能ということではない、ということも明らかになってきつつあるので、前途は明るい。
 と、激しい一喜ではなく、静かな一喜を胸に抱いている、つもり。