京都こみち日記

こみちを歩く こみちに迷う 日々のこと

文化祭[中学校]

 中学の3年間で一番覚えているのは、中3の時の別のクラスの、他人の台詞だ。
 それは、「有り難き幸せ」というたった一言。
 自分のクラスの劇は「あゝ無情」を演り、わたくしは演出係りだった。当時から何事につけても練習好きだったので、この時も演出家風を吹かせて、容赦なく出演者に繰り返し演技をつけていた。
 一方、生徒会の仕事もしており、他のクラスの劇に関する情報も耳に入っていた。保健委員長だったヤッチのクラスでは「リア王」を演っていた。ヤッチは男子だが、はっきり言ってチビでまだ子どもで、生徒会役員の女子たちの間ではこっそり(鳥の)「ひなー」と呼んで可愛がっていた。目がクリッとして、全体的にポヨポヨした産毛が生えている感じだったのだ。声変わりもしていない。卒業時に生徒会役員たちで撮った写真では、男子なので一応後列に並んでいるが、精一杯背伸びしている足元が哀しくもバッチリ写っていて、母性本能をくすぐられる。そんなヤッチにもリア王で端役につき、唯一の台詞が「有り難き幸せ」だと、生徒会の会議の時にピヨピヨ話していたその印象が最も強い。「一言だけかいな!」とからかいながらも、内心、ええ台詞やなーと思っていた自分のその気持ちも、ありありと思い出せる。この台詞を思い出した時には、ヤッチの幸せも(ついでに)祈念しているからね。