京都こみち日記

こみちを歩く こみちに迷う 日々のこと

選曲に関して

 今丁度、笛の秋の発表曲を決める時期である。自選の曲は先日採譜して暗譜もできている『ひまわり』にしようかなーと思っている。グループ演奏の曲は『寿の舞(ほぎのまい)』になった。この曲は、田んぼの神さんが豊作を祈念して舞い踊る曲らしく、青々と田植えされた稲がぐんぐん伸びていく様を表したような勢いのある曲で、吹いていても活力が湧いてくる。


 どれにしようか迷っているのは、先生から提案される曲。案の定、苦手やなーと思っている「長唄から選んでください」とのこと。苦手ゆえに練習が必要だということは重々承知なのだが、イマイチためらっている。


 長唄の中でも『黒髪』や『明の鐘』『もみじ葉』などは、解説によると「暁の別れを唄った男女の情味あふれた『メリヤス物』です」とされているように、愛欲(嫉妬、憎しみなど)がからみあった、ものすごく辛気臭い恨みつらみ節で、これがわたくしが苦手とする由縁である。また「メリヤス物」とは、一説によると、吉原の遊女が「この唄をきいていると気が滅入りやんす(めいりやんす)」と廓ことばで云ったからそう呼ばれるようになったそうだ。昔の遊女でさえ気が滅入るのだから、この唄をきいた現代人のわたくしの気は、どん底に沈むことまちがいない。いや、沈むというより、理解、共感ができないのである。

 だからせめて、長唄の中でもめでたい内容を唄っている『鶴亀』にしようと、九割方決めている。