京都こみち日記

こみちを歩く こみちに迷う 日々のこと

金木犀の館

 ゴン太さんとの散歩コースに、広い庭のある、古い日本家屋があった。過去形ということは、ここも数ヶ月前に取り壊されてしまったということで、先日通った時にはご多分にもれず、コンクリート敷きの暑苦しい駐車場になっていて、思わず目を伏せてしまった。ありし日のこの御宅の庭には、二階の屋根ほどまでに樹高を伸ばした金木犀の大木があって、花が咲くその時期には、金木犀の花粉に軽いアレルギーがあるわたくしとしては、忌々しい気持ちでハンカチで口鼻を押さえて見上げ、その後走って通り過ぎることにしていた。そうまでしてもあの細い路地を通って板塀越しに見上げたくなる何かを、あの御宅と金木犀は発していた。あのナニモノかの雰囲気は一体どこに消えてしまったのか。思わず探し回ってしまう。