京都こみち日記

こみちを歩く こみちに迷う 日々のこと

 湯治宿

 宿はネットで探したのだが、ここも直感を信じて「伊藤山荘」を選んで大正解だった。
 古くて小さな民宿(元・企業の保養所)だが、知人の山小屋を訪ねたような内装でたいそう落ち着く。暖炉の炎を身近に感じながら、何も考えず深く自分の意識に沈潜していると、知らない間にハスキー犬のパコが足元に来て、自分の体重をずっしりと預けてくる。顔はコワイが、人が大好きで気の優しい犬のようだ。時折、暖炉の薪がパチパチッバキッとはぜる音。灰がブワーと舞い上がる。煙の匂い。庭にひまわりの種をついばみにくる野鳥のさえずり。山ガールだった頃に戻ったようだ。
  
 寝起きした角部屋の和室は、マウンテンヴュー。目の前に連なるなだらかな山並みの上に、どどーんと真っ白な富士山の頭頂部を見つけた早朝には「うわっ、あれ、か?!あれ、富士山かッ!?」と少々うろたえた。手が届きそうなほど近くに見えたのだ。これはライブでないと伝えられない感動。しばし拝んで朝風呂(露天風呂)に浸かると、湯船からも同じ雪富士が拝めた。全裸で富士山パワーを浴びるこの幸せ。開放感。全身が冷んやりしてくると、また白濁硫黄泉、泥の湯に身を沈める。身も心もとろっとろのゆるゆるにほぐれてくる。これにて、ぎっくり腰、完治。再発防止のため、再来を希望す。