京都こみち日記

こみちを歩く こみちに迷う 日々のこと

『京大の石松、東大へゆく−インターン制を変えた男』(自伝)

京大の石松、東大へゆく―インターン制を変えた男 著者の二木氏は、実はわたくしの職場のエライ人。ボスの、そのまた上の年代のエライ先生なので、会議でお目にはかかるが、話しかけられたことも話しかけたこともなく、挨拶のみであまり目を合わさずにいた。
 しかし、タイトルの「石松」とはうまく付けたもので、この自伝の中では多分、二木先生の言動が森の石松ばりであるといわれたことを指していると思われるのだが、森の石松が何をした人物なのか全然知らないわたくしから見ると、そう!ガッツ石松を圧縮して目をクリっとさせたら二木先生の外見にそっくりやから、このタイトルなんやな、なるほど!と妙に納得していた。二木先生だけでなく、他の登場人物の中にも今の外見を見たことがある人たちがいて、ものすごくリアリティがある。
 それにしても主人公の医学生時代や勤務医時代の、真面目かつハチャメチャぶりは突拍子もなく、ほんの50年ほど前にこんな医者たちが実在したとはにわかには信じ難い生活態度及び活動歴である。まぁ確かに最近の会議での先生の「んなもん、国はあらゆる団体から税金とってやろうと画策してるだけなんだから、締め切りギリギリに手続きすりゃいいんだよぅ」(要約)などの意見いや、チャチャ入れ?は、医学生時代からの様々な運動、演説っぷりを彷彿させる。
 その活動を少々挙げると、吉田神社の節分会の時に、ずらりと並んだお供えの清酒(一升瓶)を2,3本、後ろからそっと抜き取って(盗んで)、吉田寮で仲間と痛飲した話や、コレラ菌を実験室の流し台から誤って流してしまった経過、ゲロを吐きながらめまいの実験の被験者になった話や自らの師匠である教授に辞任を迫ったいきさつなど、もう腹を抱えて笑ったり興奮したり感動したり。だがこれは序の口である。本編では淡々ともっとえげつない因縁話が述べられる。それが全く恨み節ではなく、笑える話になっているだけに、いやぁ、人間ってやっぱり凄いなーと思った。とても分厚い本だが一気に読了した。今度石松にお会いしたら「拝読しました」と話しかけてみようかなー(迷)。