京都こみち日記

こみちを歩く こみちに迷う 日々のこと

畳の待合室

 自分が幼児だった頃のかかりつけ医院の待合室の様子を、たまーに思い出すことがある。内科の小川医院も耳鼻科の佐田医院も、半世紀近く前の待合室は畳敷きだった。狭い部屋の周囲には固くて黒い革のソファもあるのだが、混んでいると畳に正座して自分の診察順を待っているおばあさんなんかもちらほらおられた。幼いわたくしは母に「まだ?」とささやくように尋ねる。すると母もわたくしの耳元で「次はあのおじいさん、その次はあの女の子、ほんでその次。」と答える。それがたいてい当たるのが不思議だった。診察が終わって薬をもらうのを待っている間は、すりガラスが入った小さな木の窓枠がある受付の前の、これも木のカウンターにサルのようにぶらさがる。たまに背伸びをして受付の窓が開くチャンスをうかがう。風邪っぴきでしんどかったはずなのだが、なぜか心安まる記憶。