京都こみち日記

こみちを歩く こみちに迷う 日々のこと

 衝撃の体験

 高校時代にワンゲル部に入り、最初の衝撃的な体験は、まずその荷物の重さである。それまで箸より重い物を持ったことがなかった16歳が、背中に10数キロの荷物を背負うのである。試しに自宅で背負って立ち上がってみただけでフラフラで、相当な挫折感を味わうほどの衝撃の重さだった。
 それから、雨が降っても山には行く、のである。この業界においてはこのケースは当たり前過ぎて、どうやら不文律らしく、山行前のミーティングでも、雨天の場合はどうなるか、という説明もないし質問する部員もいない。初めて山行の予定がある日に朝から雨が降った時は、まさか行くわけないし、と思いながらも、学校行事の遠足のように延期とか中止などという電話連絡が全然まわってこないので、一応、念のために荷物を背負って学校(集合場所)に行ってみた。当時は、こちらから先輩に電話をして尋ねてみるというアタマも度胸もなかった。半信半疑でとにかく行ってみると、先輩たちは普段と変わりなくザックを背負って集まってくる。雨のことなど話題にする人もいない。その状況を目にしただけで、誰かに確認するまでもなく「雨でも山に行く」ということを悟った。内心は気を失いそうなほどの衝撃を受けていたが、「冗談でしょ?」と口に出して念押しするのも大袈裟な気がして(空気よんだ)、無言のまま出発した。初めての雨の中の山歩きのことは全然覚えていない。多分、死線をさまよっていたのだろう。
 しかし慣れとは恐ろしいもので、2年生になると、「えっ、雨でも行くんですか!?ザック持って来ていません」などとぬかす、空気のよめない1年坊主に「当たり前やろ。ザック取りに帰って来い」などと指図するまでに若年性の仙人化?が進んでいた。3年生ともなると、ザーザー降りの中でも「♪オ〜、スコール、こんな気持ちは〜、オ〜、スコール、初めてな〜の、、、青い渚、あなたとふたり〜♪」と海辺のデートでずぶ濡れになった気分で、暗〜い山の中を歩けるほど、歩行瞑想、いや妄想が進んでいた。こうなると、もう若干18歳にして、衝撃的にやけくそ。
 歌詞は松田聖子「スコール」より