京都こみち日記

こみちを歩く こみちに迷う 日々のこと

生還

 やって来ました、高尾山。(東京都八王子市)
 この山行を一言で言うと「生き還った」。
 昨夜まで、高層階のスタイリッシュな部屋や無駄に広い会議場や満員電車に缶詰で眠れず、病気かと思う程しんどくて、棺桶の中で眠りたいとまで思い詰めていた。
 しかし山に足を踏み入れ、木の根や枯葉枯れ枝や虫だらけのデコボコした地道や、不安定なガレ場を上がったり下りたりして歩いていると、自然と呼吸が深くなり、固まっていた筋肉がだんだんと緩んでほぐれてきた。身体がほかほか温かい。空気が濃い。木々や土の香りで満ちている。自分の心身がぐんぐん元気になってくるのがわかる。ふつふつとエナジーが湧き出てくる。

 30年ぶりに同行したS.W.V.Cの上級生の後頭部越しに眺む、高尾山頂からの景色。
 実は先々月にあったOB会の時に、関東方面在住のセンパイ方をつかまえ、今回の山行計画を強引に取りつけたのだ。集合場所の高尾山口駅前でセンパイのザック姿をみつけた瞬間に、わたくしの心は高1の山ガールに還ったが、30年の月日は、わたくしたちを中高年の登山者グループに変えた。しかし一人一人の歩く格好は、ワンゲル部時代と変わらない。わたくしはポケットに手をつっこんだり、腕組みして歩く。いざ山に入ると、一番ペースの遅い人に合わせて歩くという事を心身が覚えているようで、何の遠慮も気負いもなく、先頭きって、ぶらぶらとゆっくり一歩一歩山道を歩いて行ける。この、センパイたちはじめ、周囲の自然全部に包まれ見守られ育まれている感覚。目には見えないが、確かにある関係性、安心や信頼や自信がワタシを穏やかに満たしてくれる。感無量。まさに、山に、還ってきた。